はじめに
”ラストヒット”の達成要件を、複数人による同時攻撃(通称:合わせ)の結果、と理解している人は少なくない。ただ、この主張はラストヒットのメカニズム自体の理解を放棄している。この場合、ラストヒットを、偶発的な”結果”、として捉えているからだ。
この記事では、複数人による同時攻撃でしかラストヒットはかなわない、と唱えるのではなく、なぜ・どうして、ラストヒットが可能となるのか、そのメカニズムを明らかにしていく。そうすることで、ラストヒットの獲得率の上昇や大会等での高度なラストヒットに対する理解の伸長が期待できる。
前提
ラストヒットとは何か、ということは周知の事実であろうが、あえて言うとすれば、オブジェクトや野生/相手ポケモンを撃破する最後の攻撃、のことである。撃破による恩恵は基本的にラストヒットの主体に対して行われるため、非常に重要な項目である。
では、ラストヒットを構成する要素は何であろうか。それは、与ダメージ、のみである。これに対する理解が間違ってくると、そもそもタイミングを理解していないのだから、全てのラストヒットは偶然である。そして、永久に意識的にラストヒットを獲得することはない。
与ダメージ
計算式
与ダメージの計算式は、「(与ダメージ)=(ダメージ量)×(ダメージ数)」である。ダメージ量は1回あたりのダメージ量を、ダメージ数はヒットしたダメージ数を指す。
区分
与ダメージの区分は、主体について自分と自分以外、ラストヒットについてラストヒットとラストヒット以外に区分される。そのため、基本的に4つの項目から選択して役割を担うことになる。基本的に、ラストヒットの区分で分担が重要となる。
技仕様
まず、技の仕様を2つに区分する。単発系と連発系、である。単発系はカイリューの破壊光線のような1発の攻撃によるダメージ量の大きい攻撃を指す。連発系は、ジュラルドンの竜の波動のような1発あたりの攻撃によるダメージ量は少ないが連続してダメージを与え総量として大きいダメージをあたえるものを指す。
では、実際のラストヒットについて考察しよう。条件は以下の通りである。
- 撃破対象のポケモンの残りHPは10
- ポケモンAは毎秒2のダメージを与える攻撃を5秒間行う
- ポケモンBは4のダメージを与える技を行う
この場合、どちらのポケモンもラストヒットが可能であることはお気づ気だろうか。ポケモンAは技を発動してから3秒後から5秒後までにポケモンBが技をヒットさせれば、ラストヒットはポケモンBが獲得する。一方で、これができない場合、ポケモンAがラストヒットを獲得する。
この場合の優位性は、ポケモンAのような連発系の技の場合は連発速度、ポケモンBのような単発系の技の場合はダメージ量となる。ポケモンAの技が早ければ早いほど、ポケモンBはタイミングの限定された瞬間に攻撃を当てることは難しくなる。一方で、ポケモンBの1発あたりのダメージ量が10よりも大きければポケモンAがラストヒットを獲得することは難しい。
その他の要素
ラグ
ラグとは、技を発動してから対象物に技が判定されるまでの時間的な差分、のことである。
技は基本的に操作してから若干の時間差が生じる。そのため、時間差を勘案した上で技を発動しなければならない。基本的な考え方としては、発動と判定までのダメージ総量を予測した上で、自身の発動した技の総量と相手とポケモンの残りHPの差を考えることである。例えば、上の例を踏襲し技のラグを1秒とする。この場合、ポケモンAは1秒後に残りHPが6から10になる予測をたてて技を発動する。一方、ポケモンBはHP1でも対象ポケモンのHPが残ることを期待し、ポケモンAの発動した技に若干ズラし発動する。
特筆すべき点としては、いわゆる練度やPSという言葉で言い表される、技術向上、によって概ね対応可能である。ただし、ラグが長くなればなるほど難易度が格段に上がるため注意が必要である。
妨害
妨害とは、相手の動きを妨害し、ラストヒットのタイミングで攻撃を行わないようにすることである。これまでの項目では、複数ポケモンでラストヒットを奪い合うような条件を前提としている。しかし、そもそも、相手のポケモンを減らしてしまえば、奪い合う主体が少ないのだから、チームとしてのラストヒットの難易度は格段に下がる。
技巧
基本指針としては、与ダメをラストヒットとラストヒット以外に分けて、ラストヒット以外を自身以外に与えさせ、ラストヒットを自分が獲得するというものである。
オブジェクト以外
パターンA:相手と対峙する場合
この場合は、いわゆる「睨み合い」が発生する。ラストヒットの一つ前のダメージを相手に与えさせ、ラストヒットを獲得するというもの。これが発生する理由は技の連続使用が難しい点にあるだろう。大きく2つあると考えている。
一つは、どうにかして相手よりも早く倒しきるというもの。すなわち、ラストヒットを狙う技を発動する前に倒しきるというもの。方法としては、通常攻撃でHPを削り、技で倒しきるギリギリのところで技を発動、倒しきれなかった場合は通常攻撃で補完する、という流れである。
もう一つは、諦めたと見せかけて油断させることで相手に攻撃させ、ラストヒットを狙うというもの。
例外的にバトルアイテムのを利用する方法もある。エネコのしっぽやプラスパワーを用いることで、ラストヒットのタイミングをズラして、獲得するというもの。ただし、プラスパワーについては通常攻撃の速度上昇も含めて考慮する必要がある。
パターンB:対象を限定しない場合
全ての野生ポケモンのHPを把握することは不可能であるから、事前に狙いを定めないこともあるだろう。そうした場合に有効なのが、視界内の野生ポケモンについてHPを把握し、ラストヒットの狙えそうなHPであれば積極的にラストヒットを狙っていくというもの。
オブジェクト
パターンA:誰もいない場合
誰もいない場合は、(ラストヒットー2)を意識する。(ラストヒットー1)を相手にとらせ、ラストヒットを獲得する。なぜ、誰もいないのに手間をかけるのか。それは、相手がラストヒットを狙っているかもしれないからだ。そのため、ラストヒットの直前だけは、ラストヒットを意識した特別な動きをする必要がある。
パターンB:人数不利もしくは味方0人の場合
この場合は、遠距離攻撃または急速な接近が可能なポケモンに限られる。草むらに隠れるなどして、ラストヒット直前までのHPを相手ポケモンによって削ることを基本とする。しかしながら、相手が攻撃しない場合も存在する。その場合は、デスを覚悟で攻撃しなければならない。基本的には、少し攻撃して離れるなどの攻撃する素振りで、相手の攻撃を誘う動きがメインになる。相手が攻撃してこなければラストヒットは不可能で、攻撃してくれば可能である。また、デスする可能性も高い。
パターンC:多めの人数でダメージを与えている場合
通常攻撃をメインとして、技のCTは残しておく。オブジェクトのHPを注意深く観察し、タイミングよく技を発動する。前項と重なるが、攻撃人数が多い分、ダメージ予測が一層難しくなることが予想される。また、オブジェクトを直接攻撃している味方ポケモンがいるならば、思い切って早めに攻撃してみても良いかもしれない。
さいごに
ラストヒットのメカニズムを明らかにし、その運用方法を示した。図などはなく、文章も怪しい。一方で、タイミングよく、などと感覚的な文言でラストヒットが語られることも事実である。分かりにくくも、精読し、繰り返し訓練すれば、確実に上達することは間違いない。
ラストヒットを上達させたいが、その具体的な方法が分からない、という諸氏らは一度実践してみるとよいかもしれない。